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今更聞けない?箇条書きで読む、ウェブアクセシビリティの基礎

今更聞けない?箇条書きで読む、ウェブアクセシビリティの基礎

  • Ikebe
  • 2024.05.10

ウェブアクセシビリティについての知識は、Web制作において必須になりつつあります。
令和6年(2024年)4月1日からの改正障害者差別解消法の施行により、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されたことも受け、その重要性はより高まっています。
この記事では、「ウェブアクセシビリティとは何か」を箇条書きでわかりやすく解説します。

はじめに

そもそもウェブアクセシビリティとはなんぞや?という方のために、具体的な対応例を紹介します。

多くのウェブサイトで画像が活用されていますが、すべてのユーザーが画像を視覚的に体験できるわけではありません。画像に含まれる情報を視覚的に捉えることができないユーザーのために、代替テキスト(alt属性)という情報が利用されています。代替テキストを設定することで、以下のようなメリットがあります。

  • スクリーンリーダーなどの音声再生によって、代替テキストを読み上げて、視覚障害のある方に画像の内容を伝えることができる
  • 画像の読み込みが遅い環境で表示に時間がかかる場合、代替テキストが表示されることで画像の内容を理解できる

このように、ウェブアクセシビリティはWeb制作に直接関わっていなくても、身近で重要なものになっています。

デジタル庁ガイドブックから読み解く、ウェブアクセシビリティの基礎

ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」は、デジタル庁が作成したウェブアクセシビリティの手引きです。本記事では、こちらのデジタル庁ガイドブックの内容(2024年5月10日時点)をベースに、ウェブアクセシビリティの基礎を箇条書きで読みやすい形で解説していきます。

「アクセシビリティ」とは

  • 「アクセシビリティ」=Access(近づく、アクセスする)+Ability(能力、〜できること)
    →「アクセスできる」という意味から派生して、「(製品やサービスを)利用できること、またはその到達度」という意味でも使われる
  • 「アクセシビリティ」の改善は、障害者の方向けの対応だけではない
    例)老眼で文字が読みにくくなること、地方の人が東京の府省庁が発行する情報にアクセスしづらいことも、アクセシビリティの問題

「ウェブアクセシビリティ」とは

  • ウェブアクセシビリティとは:障害の有無や程度、年齢や利用環境にかかわらず、ウェブで提供されている情報やサービスを利用できること。またはその到達度を意味する。
  • 一般的に「ウェブアクセシビリティが確保できている」状態:
    • 目が見えなくても情報が伝わる、操作できる
    • キーボードだけで操作できる
    • 一部の色が区別できなくても情報が欠けない
    • 音声コンテンツや動画コンテンツでは、音声が聞こえなくても何を話しているかわかる
  • ウェブは文字や色を変えて閲覧したり、合成音声で読み上げたり、自分に合った方法を選択してアクセシビリティを担保しやすいメディアである

ウェブアクセシビリティの対象者

  • 平成28年の時点で身体障害者手帳の所持者が428.7万人となっており、この人数は年々増加している
  • ウェブアクセシビリティの恩恵を受ける人として、以下のような想定ができる:
    • 視覚障害のある人
    • 聴覚障害のある人
    • 視覚と聴覚の両方に障害のある人(盲ろう)
    • 上肢障害のある人
    • 発達障害や学習障害のある人、知的障害がある人
    • 色覚特性がある人
    • 高齢の人
    • 一時的に障害がある状態の人
      例)電車内で動画を見たいのにイヤホンを忘れた、眼鏡を忘れてきたので文字がよく見えない、利き手を怪我してマウスが使えないなど

ウェブアクセシビリティの「よくある誤解」

1. 「文字サイズ拡大ボタン」や「カラーテーマ変更ボタン」のような補助のための機能を設置すれば、アクセシビリティが向上できるという誤解

  • 実際に文字を大きくして閲覧する必要がある利用者や、色を変更して閲覧する利用者は、特定のサイトだけではなくすべてのサイトで同じ状態になっていることを望む
  • パソコンやスマートフォンなど、デバイス(そのOS)が提供している設定項目を自身の状況に応じて調整していることが多く、特定のサイトに付加された機能を積極的に使いたいわけではない
  • 補助機能は、コントラスト比や文字サイズといった「目で見える」部分に関する機能が多いため、「スクリーンリーダーで情報を読み上げるのに用いられる、画像の代替テキストがない」といった、視覚障害がある人にとっての問題は解決されない
  • デバイスの設定機能での変更に対応できるような実装や、読み上げて意味が伝わるようにコンテンツを作成すること、操作がきちんとできるように実装することを優先すべき

2. ウェブアクセシビリティの自動チェックツールを使ってチェックし改修することだけが、アクセシビリティ向上の方法であるという誤解

  • ウェブアクセシビリティを向上させるための要素には、人が目視で確認しないと判断できないものが多く含まれている
    例1)ウェブアクセシビリティのチェック項目の1つに「ウェブページの言語設定」があるが、言語が設定されていないことはチェックツールで判別できても、どの言語を選ぶのがよいかは人が確認しないとわからない
    例2)
    画像に代替テキストが付与されていることはチェックツールでチェックできても、それが適切なテキストかどうかはチェックツールは判断できない
  • チェックツールで見つけられる問題は、ウェブアクセシビリティの問題の2割から3割程度
  • ウェブアクセシビリティは基本的に「人がチェックする必要がある」と考えるべき

「ユーザビリティ」とどう違う?


  • 「ユーザビリティ」は「特定のユーザが特定の利用状況において、システム、製品又はサービスを利用する際に、効果、効率及び満足を伴って特定の目標を達成する度合い」
    →ISO9241-11という規格の中で定義されている
  • 「ユーザビリティ」は、限定された条件下での「有用性」を表す言葉
  • 「アクセシビリティ」は、規格や文章の中それぞれで定義されることはあるが、一般的に広く使われている共通の説明はない
  • JIS X 8341-1において「アクセシビリティ」は、「様々な能力を持つ最も幅広い層の人々に対する製品、サービス、環境又は施設(のインタラクティブシステム)のユーザビリティ」と定義されていることなどから、「あらゆる人のユーザビリティ」という言い方をすることもある
  • アクセシビリティとユーザビリティは明確に区分できるものではない
  • ユーザビリティを高めることがアクセシビリティを高めることになり、その逆もある
    どんなシーンで、誰が、何を目的として、どのように使うのか」はウェブアクセシビリティの向上においても欠かすことのできない考え方

おわりに

ウェブアクセシビリティを改善することは、単に法的要件を満たすだけでなく、すべてのユーザーが情報に平等にアクセスできるようにするための重要なステップです。
本記事ではウェブアクセシビリティの基本について触れましたが、実際にウェブアクセシビリティ対応を行う場合、学ぶべきことはまだまだあります。(具体的な内容は今後続編にて掲載予定です!)

株式会社アンタイプでは、ウェブアクセシビリティ向上を支援するサービスを提供しています。
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