
- Yamashita
- 2026.01.29
はじめに:コード補完だけで本当に十分ですか?
VS CodeでGitHub Copilotを使っているエンジニアは多いでしょう。コード補完が効いて、関数の続きを予測してくれる。確かに便利です。しかし、それは「AIを活用している」と言えるのでしょうか。
Copilotは優れたツールですが、その本質は「補完」です。あなたが書こうとしているコードを先回りして提案してくれる。つまり、主導権は常に人間にあり、AIは従属的な役割に留まります。
一方、2025年に入ってから急速に進化したAIツールたちは、根本的に異なるパラダイムを提示しています。AnthropicのClaude Code、OpenAIのChatGPT、GoogleのGemini、そしてCopilot自身も「Agent Mode」を搭載し、単なる補完から「自律的に仕事をする存在」へと進化しつつあります。
本記事では、受託Web制作の現場で働くエンジニア、特に複数のクライアントから納品されるバラバラなソースコードの保守に悩む方に向けて、4つの主要AIツールを徹底比較します。MCP、A2A、UCPといった新しいプロトコルへの対応状況も含め、将来性を見据えた選択の指針を提示します。
1. 4つのAIツールの特徴を押さえる
まず、GitHub Copilot、Claude Code、ChatGPT、Geminiそれぞれの特徴を整理しておきましょう。
1-1. GitHub Copilot:補完からエージェントへの進化
GitHub Copilotは2021年の登場以来、コード補完ツールの代名詞となりました。しかし2025年、Copilotは大きな転換点を迎えています。
2025年4月に正式リリースされた「Agent Mode」により、Copilotは単なる補完ツールから自律型コーディングエージェントへと進化しました。プロンプトから具体的なアクションを自動実行し、複数ファイルの同時編集、テストの自動作成、バグ修正、リファクタリングまでを自律的に行います。
さらに重要なのは、Model Context Protocol(MCP)への対応です。2025年5月のアップデートでMCPサポートがプレビュー提供開始となり、VS Code、JetBrains、Eclipse、Xcodeで利用可能になりました。MCPにより、Copilotは外部のデータソースやツールと標準化された方法で連携できるようになっています。
料金面では、Pro(月額$10)、Pro+(月額$39)、Business(月額$19/ユーザー)、Enterprise(月額$39/ユーザー)の4プランがあり、プレミアムリクエスト制度により高性能モデル(Claude 3.5/3.7 Sonnet、Gemini 2.0 Flash、OpenAI o3-mini)へのアクセスも可能です。
1-2. Claude Code:自律的に動く開発エージェント
Anthropicが提供するClaude Codeは、最初から「エージェント」として設計されたツールです。ターミナルから自然言語で指示するだけで、AIがプロジェクト全体を理解し、ファイル操作・コマンド実行・Git操作まで自律的に行います。
最大の特徴は、MCPの「生みの親」であるAnthropicが開発しているという点です。2024年11月にAnthropicが発表したMCPは、2025年12月にLinux Foundation傘下のAgentic AI Foundation(AAIF)に寄贈され、業界標準として確立しました。Claude CodeはMCPのリファレンス実装として、最も深いレベルでの連携が可能です。
2025年7月に追加されたSubAgent機能では、複数のAIが役割分担してタスクを並列処理することも可能になりました。また、2026年1月にリリースされた「Cowork」機能により、ターミナル操作なしでもエージェント機能を利用できるようになり、非開発者でも活用の幅が広がっています。
料金は、Claude Pro(月額$20)またはMax(月額$100〜$200)のサブスクリプションが必要です。
1-3. ChatGPT:Canvas機能で共同編集が可能に
OpenAIのChatGPTは、2024年末にリリースされた「Canvas」機能により、文章やコードをリアルタイムで共同編集できるようになりました。従来のチャット形式とは異なり、専用のウィンドウでコンテンツに部分修正を加えられます。
2025年1月のアップデートでHTML/Reactのレンダリングに対応し、WebサイトやWebアプリのコードを生成してChatGPT内で直接プレビューできるようになりました。推論モデル「o1」でもCanvasが利用可能になり、より複雑なコード生成にも対応しています。
MCPへの対応も進んでいます。2025年3月、OpenAIはMCPを正式採用し、Agents SDK、Responses API、ChatGPTデスクトップアプリに統合しました。Sam Altman CEOは「People love MCP」とコメントし、競合であるAnthropicの標準を採用するという異例の決断を下しました。
Canvas機能は無料プランでも利用可能で、GPT-4oモデルを搭載したCanvasでは、コメントの正確性が30%向上、品質が16%向上したとOpenAIは報告しています。Plus(月額$20)、Pro(月額$200)のプランでより高度な機能が利用できます。
1-4. Gemini:マルチモーダルとGoogle連携の強み
GoogleのGeminiは、テキスト・画像・音声・動画を同時に理解・生成できる「ネイティブマルチモーダル」が最大の強みです。2025年11月にリリースされたGemini 3では、推論能力が大幅に向上しました。
Deep Research機能では、複数の情報源を横断的に調査し、包括的なレポートを自動生成できます。また、Google Workspaceとの深い連携により、Gmail、カレンダー、ドキュメント、スライドとシームレスに接続できる点も、ビジネス活用において大きな利点です。
プロトコル対応では、GoogleはMCPを2025年4月に採用したほか、独自のAgent2Agent(A2A)プロトコルを開発しました。A2Aは2025年12月にLinux Foundationに寄贈され、MCPと並ぶ業界標準として位置づけられています。さらに2026年1月には、コマース向けのUniversal Commerce Protocol(UCP)を発表し、エージェントによるECの標準化を推進しています。
料金は、基本機能は無料、AI Pro(月額2,900円)、AI Ultra(より高機能)のプランがあります。
2. 4ツール徹底比較
各ツールの特徴を比較表で整理します。
|
観点 |
GitHub Copilot |
Claude Code |
ChatGPT |
Gemini |
|
動作モード |
補完+Agent Mode |
自律エージェント |
対話+Canvas共同編集 |
対話+リサーチ |
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ファイル操作 |
◎ IDE統合 |
◎ 直接操作 |
△ Canvas内 |
○ Drive連携 |
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コード実行 |
◎ ターミナル実行 |
◎ ターミナル実行 |
○ Python/React |
△ 限定的 |
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MCP対応 |
○ プレビュー |
◎ ネイティブ |
○ 対応済 |
○ 対応済 |
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A2A対応 |
△ 未対応 |
○ 対応予定 |
△ 未対応 |
◎ 開発元 |
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IDE統合 |
◎ VS Code等 |
○ ターミナル |
△ 独立 |
△ 独立 |
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最低料金 |
$10/月〜 |
$20/月〜 |
無料〜 |
無料〜 |
結論として、「IDE統合と既存ワークフロー重視」ならCopilot、「開発作業の自律的な自動化」ならClaude Code、「コードの共同編集・レビュー」ならChatGPT Canvas、「リサーチ・資料作成・Google連携」ならGeminiが適しています。
3. 新時代のプロトコル:MCP、A2A、UCP、AP2
2025年から2026年にかけて、AIエージェント間の通信を標準化するプロトコルが急速に整備されました。これらのプロトコルへの対応状況は、AIツールの将来性を測る重要な指標です。
※プロトコルの技術的な詳細については、当社ブログ記事「UCP・A2A・MCP・AP2 | AIエージェント連携プロトコルの全体像」で詳しく解説しています。
3-1. MCP(Model Context Protocol):AIの「USB-C」
MCPは2024年11月にAnthropicが発表したオープンスタンダードで、AIモデルと外部データソース・ツールを接続するための統一インターフェースです。
MCPは「AIのUSB-C」と呼ばれています。USB-Cがデバイスと周辺機器の接続を標準化したように、MCPはAIモデルとデータソース・ツールの接続を標準化します。
2025年12月、MCPはLinux Foundation傘下のAgentic AI Foundation(AAIF)に寄贈されました。Anthropic、OpenAI、Google、Microsoft、AWS、Cloudflareなどが参加し、業界標準として確立しています。月間9,700万回以上のSDKダウンロード、10,000以上のアクティブサーバーが稼働しており、ChatGPT、Claude、Cursor、Gemini、Microsoft Copilot、VS Codeなど主要プラットフォームがサポートしています。
3-2. A2A(Agent-to-Agent Protocol):エージェント間通信
A2Aは2025年4月にGoogleが発表したプロトコルで、AIエージェント同士が相互に通信し、タスクを委任・協調するための標準です。
MCPが「縦方向」(エージェントとツール)の接続なら、A2Aは「横方向」(エージェント同士)の接続です。
A2Aでは、エージェントが「Agent Card」と呼ばれる能力定義を公開し、他のエージェントが動的にその能力を発見・利用できます。長時間実行タスクのサポート、マルチモーダル通信、OAuth 2.0ベースのセキュリティが特徴です。
2025年12月にLinux Foundationに寄贈され、MCPと並ぶ業界標準として位置づけられています。
3-3. UCP(Universal Commerce Protocol):コマースの統一言語
UCPは2026年1月にGoogleがNRF(全米小売業協会)カンファレンスで発表した、エージェントによるコマースのためのオープンスタンダードです。
Shopify、Etsy、Wayfair、Target、Walmartと共同開発され、Adyen、American Express、Mastercard、Visa、Stripeなど20社以上が賛同しています。UCPはMCP、A2A、AP2と互換性があり、REST API、MCP、A2Aのいずれからでも接続できる設計になっています。
受託Web制作においては、ECサイトの構築・運用でこのプロトコルの動向を把握しておくことが重要になってきます。
3-4. AP2(Agent Payments Protocol):決済のセキュリティ
AP2は2025年にGoogleが発表した、エージェントによる決済のためのプロトコルです。UCPと連携し、ユーザーの同意を暗号学的に証明しながら、エージェントが安全に決済を実行できる仕組みを提供します。
これらのプロトコルは相互に補完的な関係にあり、今後のAIエージェント開発において必須の知識となっていくでしょう。
4. 保守運用の現場から:バラバラなソースコードという課題
ここからは、受託Web制作・保守運用の現場で特に深刻な課題と、AIエージェントによる解決策を掘り下げます。
4-1. 複数の制作会社から納品されるコードの問題
大手企業のクライアントでは、複数の受託制作会社に発注しているケースが珍しくありません。A社がコーポレートサイト、B社が採用サイト、C社がキャンペーンLP、D社がECサイト。それぞれが独自のコーディング規約、CSS設計、ディレクトリ構造で納品してきます。
そして、サーバー保守を担当する会社(当社を含め)は、これらすべてを横断的に管理する必要があります。
具体的には以下のような問題が発生します。
- CSS設計の不統一:BEM、FLOCSS、SMACSS、独自設計が混在し、スタイルの競合が頻発
- 命名規則の不統一:同じ要素に対して.btn、.button、.c-btn、.m-buttonなど様々な命名
- ドキュメントの欠如:コーディングガイドラインが納品されない、または形骸化している
- 依存関係の混乱:jQuery、React、jsが同一サイト内で混在
- バージョン管理の断絶:Gitの履歴がリセットされた状態で納品される
軽微な修正依頼であっても、「どのファイルを修正すべきか」「影響範囲はどこまでか」「過去にどのような経緯でこうなったのか」の調査に多大な時間がかかります。
4-2. AIエージェントによる解決策
このような課題に対して、AIエージェントは強力な解決策を提供します。
コードベース全体の分析・ドキュメント化:Claude Codeに「このサイトのCSS設計方針を分析して、ドキュメント化して」と指示すれば、既存コードから設計意図を推測し、暗黙知を形式知化できます。各制作会社のコーディング規約が明文化されていなくても、AIがパターンを抽出してくれます。
横断的なコード検索・影響範囲分析:「.header-navというクラスを使っているファイルをすべて列挙して、修正した場合の影響範囲を分析して」といった指示で、複数サイトにまたがる影響範囲を瞬時に把握できます。
統一ルールへのリファクタリング提案:「このサイト群のCSS設計をFLOCSSに統一する場合、どのような段階的移行計画が考えられるか」といった戦略的な相談も可能です。AIは既存コードを分析した上で、現実的な移行パスを提案できます。
修正履歴の推測・復元:Gitの履歴がない場合でも、コードの書き方の変遷(例:古いjQuery記法と新しい記法の混在)から、おおよその修正履歴を推測させることができます。
特にClaude CodeのMCPサーバー連携を活用すれば、Google Drive上の過去の納品ドキュメント、Slack上のやり取り、GitHubのIssueなどを横断的に参照しながら分析を行うことも可能です。
5. 受託Web制作でAIが光る場面
保守運用以外にも、AIエージェントが真価を発揮する場面は多くあります。
5-1. 量産ページの展開作業
下層ページを10本、20本と量産する作業は、受託案件では日常茶飯事です。Claude Codeに「このテンプレートを使って、以下の10ページ分のHTMLを生成して」と指示すれば、数分で完了します。ChatGPTのCanvasを使えば、生成されたコードをその場でプレビューしながら微調整することも可能です。
5-2. 軽微な修正対応の効率化
運用案件で頻発する「ちょっとした修正依頼」。電話番号の変更、文言の差し替え、バナーの追加。「サイト内のすべてのページで電話番号03-XXXX-XXXXを03-YYYY-YYYYに置換して」とClaude Codeに指示すれば、grepやsedを知らなくても、自然言語で一括置換が可能です。
5-3. ドキュメント・資料作成
納品時に必要なコーディングガイドライン、更新マニュアル、修正履歴。これらをコードから自動生成させれば、ドキュメントと実装の乖離を防げます。Geminiを使えば、技術的な内容を非エンジニアにも分かりやすい言葉に変換し、Google Docsに直接出力することも可能です。
5-4. コードレビュー・品質チェック
HTMLバリデーション、アクセシビリティチェック、クロスブラウザの懸念点洗い出し。AIに「このHTMLをWCAG 2.1 AAレベルでチェックして」と指示すれば、網羅的なレビューが可能です。ChatGPT Canvasのコードレビュー機能では、改善点をインラインで提案してくれます。Copilotの「Copilot code review」機能でも同様のことが可能です。
6. 正直に言う「向かない場面」
AIツールは万能ではありません。受託案件の現場では、向かない場面も確実に存在します。
6-1. ピクセルパーフェクトなデザイン再現
Figmaカンプの「1pxのズレも許さない」再現は、現状のAIには難しいです。デザイナーの意図(余白のリズム、視覚的バランス)を汲み取ることはできません。初期コーディングは人間が行い、量産・展開にAIを使うという分業が現実的です。
6-2. 既存コードとの完璧な整合性
既存サイトの「独自のCSS設計」「レガシーなclass命名」に完璧に合わせることは苦手です。Claude CodeではCLAUDE.mdにプロジェクト固有のルールを詳細に記述すれば精度は上がりますが、その整備コスト自体を考慮する必要があります。
6-3. 責任の所在
AIが生成したコードにバグがあった場合、クライアントへの説明責任は人間が負います。「AIが書いたので」は通用しません。結局、全コードを人間がレビューする必要があり、「レビューする時間があるなら最初から自分で書いた方が早い」という場面も確かに存在します。
6-4. 単発・超短納期案件
AIツールの初期学習(プロンプトの書き方、ルール整備)には時間がかかります。単発のLP案件や超短納期案件では、準備コストが効率化メリットを上回ることがあります。長期運用案件や大量ページ案件でこそ、ルール整備が資産として活きてきます。
7. 明日から試せる活用法
いきなり全面導入ではなく、「失敗しても影響が小さい領域」から始めることをお勧めします。
7-1. 保守案件のコードベース分析(Claude Code推奨)
複数の制作会社から納品されたサイトのコードベースを分析させ、CSS設計方針や命名規則のパターンを抽出させましょう。これだけでも、今後の修正作業の効率が大きく向上します。
7-2. 運用案件の文言一括置換(Claude Code / Copilot Agent Mode推奨)
電話番号や会社名の変更など、単純な置換作業から始めましょう。「全ファイルを検索して、該当箇所を一覧表示してから、置換を実行する」という流れで、安全に作業できます。
7-3. 納品ドキュメントの自動生成(Gemini / ChatGPT推奨)
コードを読み込ませて、更新マニュアルやコーディングガイドラインを生成させます。Geminiならクライアント向けの分かりやすい言葉に変換し、Google Docsへ直接出力できます。
7-4. MCPサーバーの構築(将来への投資)
自社の開発ワークフローに合わせたMCPサーバーを構築しておくと、どのAIツールからでも同じ方法でアクセスできるようになります。例えば、社内のコーディング規約データベースや、過去の修正履歴へのアクセスをMCPで標準化しておけば、Claude Code、ChatGPT、Copilotのいずれからでも利用可能です。
8. まとめ:将来を見据えた選択を
AIツールの選択において、機能比較だけでなく「プロトコルへの対応」という視点が重要になってきています。
MCPは業界標準として確立しました。Anthropic、OpenAI、Google、Microsoftという主要プレイヤーすべてが参加し、Linux Foundation傘下で運営されています。MCPへの対応状況は、AIツールの将来性を測る最も重要な指標と言えます。
GitHub Copilot、Claude Code、ChatGPT、Geminiの4ツールは、いずれもMCPに対応しています。しかし、その対応の深さや、A2A、UCPといった新プロトコルへの姿勢には違いがあります。
受託Web制作・保守運用の現場では、「複数の制作会社から納品されるバラバラなソースコード」という固有の課題があります。この課題に対して、AIエージェントは強力な解決策を提供します。コードベース全体の分析・ドキュメント化、横断的なコード検索、統一ルールへの移行計画策定。人間には時間がかかりすぎる作業を、AIは高速に処理できます。
Copilotは優れたツールです。しかし、それだけで止まっていては、AIエージェントがもたらす真の効率化を享受できません。Claude Code、ChatGPT、Geminiといった選択肢を知り、用途に応じて使い分けることで、エンジニアがより価値の高い仕事——設計、創造的な問題解決、クライアントとのコミュニケーション——に時間を使えるようになります。
まずは小さな領域から。保守案件のコードベース分析、文言の一括置換、ドキュメント生成など、失敗しても影響が小さい領域から始めてみてください。そして、MCPサーバーの構築という将来への投資も検討してみてください。
「精度が悪い」「使えない」と決めつける前に、「どこなら使えるか」を探ってみることをお勧めします。AIとの協働は、もはや未来の話ではありません。今日から始められる、現実の選択肢です。








