
- Yamashita
- 2026.02.02
2024年後半から2025年にかけて、画像生成AI市場は劇的な変化を遂げました。従来の「とりあえずMidjourney」「無料ならStable Diffusion」という単純な図式は崩れ、用途や目的に応じた最適解が明確に分かれる時代に突入しています。本連載では、Web制作の現場で実際に画像生成AIを活用するための実践的な知識をお届けします。
この記事でわかること
- Web制作者目線での画像生成AI市場の主要プレイヤー
- 代表的な6つの「画像生成エンジン」の特徴と位置づけ
- Web制作者が押さえるべき技術トレンド
- 用途別のツール選定の考え方
1. 画像生成AIの現在地
画像生成AIは、テキストによる指示(プロンプト)から画像を自動生成する技術です。2022年のStable Diffusion公開を皮切りに急速に普及し、現在ではWebデザイン、広告制作、コンテンツマーケティングなど、あらゆるクリエイティブ領域で活用されています。
しかし、「AIで画像が作れる」という漠然とした理解だけでは、実務での活用は困難です。2026年現在、画像生成AIは多様な選択肢が存在し、それぞれに明確な得意分野があります。
主要プレイヤーの変遷
2024年までは、Midjourneyがアート・イラスト領域で圧倒的な存在感を示し、オープンソースのStable Diffusionがカスタマイズ性を求めるユーザーに支持されていました。OpenAIのDALL-Eは、ChatGPTとの統合により「会話しながら画像を作る」という新しい体験を提供していました。
2025年に入り、この構図は大きく変化します。Black Forest Labs(Stable Diffusionの開発者が設立)からFLUX.2がリリースされ、フォトリアリズムとコストパフォーマンスの両面で高い評価を獲得。GoogleはGemini 3 Proに画像生成機能を統合し、特に日本語テキストの描画精度で非常に高い性能を見せました。Adobeは著作権面に配慮した学習データを用いたFireflyで、商用利用に配慮された設計という新たな価値軸を提示しています。
2. 2026年の主要プレイヤー
「画像生成エンジン」と「デザインツール統合」の違い
画像生成AIを整理する際、重要なのは「画像生成エンジン(モデル)」と「デザインツール側のAI統合」を区別することです。
本連載で取り上げる「主要6ツール」は、いずれも独自の画像生成モデルを持ち、テキストから画像を生成する「エンジン」としての役割を担います。一方、Figma AIやCanva、Adobe Expressなどは、これらのエンジンをバックエンドで利用しながら、レイアウト・テキスト編集・プロトタイピングなどを含む「デザインワークフロー全体」を支援する統合環境です。
💡 Figma AIは、GPT-4oやStable Diffusion系モデルをプラグイン経由で呼び出すことが多く、「画像生成エンジン」というより「デザインプラットフォームへのAI統合」という位置づけです。本連載では、まず「エンジン」を理解した上で、それらをどうデザインツールで活用するかという流れで解説します。
代表的な6つの画像生成エンジン
Web制作の現場でよく検討対象になる代表的な画像生成エンジンとして、以下の6つを挙げます。もちろん、Microsoft DesignerやCanvaの生成機能など他にも選択肢はありますが、本連載ではこの6つを中心に解説します。
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ツール名 |
開発元 |
特徴・ポジション |
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ChatGPT (4o Image) |
OpenAI |
会話型インターフェース、文脈理解に優れる |
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Gemini 3 Pro |
|
日本語テキスト精度が非常に高い、Google連携、無料枠豊富 |
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Midjourney V7 |
Midjourney, Inc. |
アート・イラストに強い、パーソナライズ機能 |
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Stable Diffusion 3.5 |
Stability AI |
オープンソース、完全カスタマイズ可能、ローカル実行 |
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FLUX.2 |
Black Forest Labs |
フォトリアリズムがトップクラス、コスパ良好、マルチリファレンス |
|
Adobe Firefly |
Adobe |
著作権面に配慮、Adobe CC連携、IP補償オプションあり |
デザインツール側のAI統合
実務では、上記の画像生成エンジンに加えて、デザインツール側に組み込まれたAI機能も重要な選択肢になっています。
- Figma AI
レイアウト生成、テキスト編集、簡易な画像生成・編集を統合。プラグイン経由で各種画像生成エンジンとも連携可能 - Canva
Magic Studio機能でテキストから画像生成、背景削除、画像拡張などを提供 - Adobe Express
Fireflyエンジンを組み込んだ、より手軽なデザインツール
これらは「画像生成エンジン」というより「デザインワークフロー全体を支援する統合環境」です。本連載では、まず「エンジン」としての6ツールを深掘りし、それらをFigmaやCanvaなどの環境でどう活用するかは実践編でお伝えします。
3. 押さえておくべき技術トレンド
3-1. マルチリファレンス機能の進化
2025年の大きなブレークスルーの一つが「マルチリファレンス」機能です。これは、複数の参照画像を入力として、それらの要素を組み合わせた新しい画像を生成する技術です。
FLUX.2は最大10枚の参照画像を同時に処理でき、キャラクターの顔立ち、衣装のスタイル、背景の雰囲気などを個別に指定できます。これにより、「同じキャラクターを異なるシチュエーションで描く」「ブランドガイドラインに沿った一貫性のあるビジュアルを量産する」といったことが格段に容易になりました。
💡 マルチリファレンス機能は、ECサイトの商品画像制作やSNS用のシリーズコンテンツ制作で特に威力を発揮します。
3-2. 日本語テキストレンダリングの改善
従来、画像生成AIは画像内にテキストを描画することが苦手でした。特に日本語(漢字・ひらがな・カタカナ)は、アルファベットと比較して画数が多く、正確な描画が困難とされてきました。
この状況に変化をもたらしたのがGoogleのGemini 3 Proです。漢字を含む日本語テキストの画像内描画において、従来のツールより安定した精度を発揮するようになり、「バナー画像に日本語キャッチコピーを入れる」という、Web制作では日常的なタスクをAIで試みやすくなりました。
当社の検証(2025年末時点)では、Gemini 3 Proは「2026年」「AIコミュニケーション」といった漢字混じりのテキストを、文字化けなく正確に描画できることを確認しています。一方、ChatGPT(4o Image)では同じプロンプトで文字の崩れが発生するケースがありました。現時点では、日本語テキスト入りバナー用途ではGemini 3 Proを第一候補としておすすめできるレベルにあります。
3-3. 画像編集機能の高度化
「生成」だけでなく「編集」機能も大きく進化しています。Adobe Fireflyの「生成塗りつぶし」「生成拡張」、Geminiの自然言語による編集指示など、既存画像の部分的な修正や拡張が容易になりました。
特筆すべきは、被写体の特徴を保持したまま編集できる精度の向上です。「背景だけを夜景に変更」「人物の服装だけを変更」といった指示に対し、顔や体型が別人のように変わってしまう問題が大幅に改善されています。
4. 用途別ツール選定の考え方
画像生成AIを選ぶ際は、「何でもできる万能ツール」を探すのではなく、用途に応じて最適なツールを使い分ける発想が重要です。以下に、典型的なユースケースと推奨ツールをまとめます。
|
用途 |
推奨ツール |
選定理由 |
|
日本語テキスト入りバナー |
Gemini 3 Pro |
日本語テキスト精度が非常に高い |
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商品写真・広告素材 |
FLUX.2 Pro |
フォトリアリズムがトップクラス、コスパ良好 |
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アート・イラスト |
Midjourney V7 |
芸術的表現に強い、独自の美学 |
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法的リスク回避重視 |
Adobe Firefly |
著作権面に配慮した学習データ、IP補償オプション |
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コスパ重視の大量生成 |
FLUX.2 / SD 3.5 |
利用環境によっては1枚数円〜無料で高品質 |
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Adobe CC連携 |
Adobe Firefly |
Photoshop/Illustratorとシームレス連携 |
利用規約の確認について
いずれのツールを使用する場合も、商用利用の可否や生成物の権利関係については、各サービスの利用規約を確認した上で、社内ルールを整備することを推奨します。特にクライアントワークでは、「どのツールで生成したか」「学習データの出所はどうなっているか」といった点を事前に共有しておくと、後々のトラブルを避けられます。
💡 Adobe Fireflyは著作権面に配慮した学習データを用いており、エンタープライズ向けにはIP補償オプションも用意されています。法的リスクを特に重視する案件では有力な選択肢です。
5. 次回予告
第1回では、Web制作者目線での画像生成AI市場の主要プレイヤーと、押さえておくべき基礎知識をお伝えしました。
次回「第2回:主要6ツール徹底比較」では、各ツールの機能・料金・特徴をより詳細に比較します。「結局どれを使えばいいの?」という疑問に、具体的な数字とともにお答えします。







