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AI 2026.03.01 [AIが買い物をする時代 Vol.2]

AIが買い物をする時代 ― 第2回:ACP vs UCP ― 2大プロトコルの現在地

AIエージェントとEC事業者をつなぐ2大プロトコル、ACP(OpenAI+Stripe)とUCP(Google+Shopify)を徹底比較。手数料構造、実装方法、Amazonの防衛策まで、EC担当者に必要な情報を網羅します。

AIが買い物をする時代 ― 第2回:ACP vs UCP ― 2大プロトコルの現在地

Stripe 2026 Annual Letterから読み解くECの未来

前回の記事では、エージェンティックコマースの基本概念とStripeが示した5段階モデル、そして2026年2月時点ですでに動き始めている現実をお伝えしました。

第2回では、この新しい世界を動かす「共通言語」 ―― AIエージェントとEC事業者が商取引を行うためのプロトコルについて掘り下げます。現在、2つの主要プロトコルが急速に普及しつつあります。OpenAIとStripeが推進するACP(Agentic Commerce Protocol)と、GoogleとShopifyが推進するUCP(Universal Commerce Protocol)です。

これらはインターネット黎明期のHTTPに相当する存在です。HTTPがなければウェブブラウザとウェブサーバーは通信できなかったように、ACP/UCPがなければAIエージェントとECシステムは取引できません。今何が起きていて、EC事業者はどう備えるべきなのか。具体的に見ていきましょう。

そもそも「プロトコル」はなぜ必要なのか

AIエージェントが商品を購入する流れを考えてみましょう。

ユーザーがChatGPTに「200ドル以下のランニングシューズを探して」と伝える。ChatGPTは複数のECサイトから商品情報を取得し、比較結果を提示する。ユーザーが「これを買う」と言えば、配送先と決済情報がECサイトに渡り、注文が確定する。

この一見シンプルな流れを実現するには、膨大な技術的課題があります。商品情報をどんなフォーマットで渡すか。在庫切れのときどう通知するか。決済情報をどう安全に受け渡すか。配送オプションをどう表現するか。返品処理はどう連携するか。

各AIプラットフォームと各ECサイトがバラバラの方式でこれを実装すると、Amazon用、ChatGPT用、Gemini用、Copilot用にそれぞれ別のインテグレーションが必要になります。Stripeのブログによれば、新しいAIエージェントひとつに対応するだけで最大6ヶ月の開発期間がかかるケースもあるそうです。

プロトコルは、この混乱を解決します。共通のルールと言語を定義することで、ひとつの実装で複数のAIエージェントと取引できるようにする。90年代にHTTPが「どんなブラウザからでも同じサイトが見られる」世界を作ったのと同じ原理です。

ACP(Agentic Commerce Protocol):会話型AIに最適化されたプロトコル

概要と背景

ACPは、OpenAIとStripeが共同開発した、AIエージェントを介した商取引のためのオープンスタンダードです。2025年9月29日にChatGPT Instant Checkoutの基盤技術として発表され、Apache 2.0ライセンスのもとオープンソースで公開されています。GitHubリポジトリでスペックとドキュメントが利用可能です。

OpenAIとStripeが「Founding Maintainers(創設メンテナー)」としてガバナンスを共同管理していますが、オープンプロトコルであるため、どの決済プロバイダーやAIプラットフォームでも利用できる設計です。

技術的な仕組み

ACPの中核は、チェックアウトセッションの作成・更新・完了という一連のフローです。マーチャント(EC事業者)がACPエンドポイントを公開し、AIエージェントがそのエンドポイントを通じて取引を行います。

基本的なフローはこうなっています。まず、AIエージェントがCreateCheckoutリクエストを送信してセッションを作成します。次にUpdateCheckoutで商品の追加・削除、配送先の設定、配送オプションの選択を行います。最後にCompleteCheckoutでShared Payment Tokenを使って決済を完了させます。

ここで登場するShared Payment Token(SPT)が、ACPの重要な技術革新です。AIエージェントが人間に代わって購入するとき、クレジットカード番号そのものをエージェントに渡すわけにはいきません。SPTは取引ごとに生成される一回限りの時限付きトークンで、基になるカード情報を露出させずにエージェント経由の決済を可能にします。マーチャントはこのトークンを自社の決済ボールト(保管庫)やプロセッサーに転送して処理できます。

すべてのリクエストはHTTPSで暗号化され、Authorization: Bearer {token}による認証が必要です。Webhook(自動通知)イベントはHMACで署名されています。

バージョン履歴と進化のスピード

ACPは日付ベースのバージョニングを採用しており、その更新頻度が進化のスピードを物語っています。

2025年9月29日に初期バージョンがリリースされ、2025年12月12日にフルフィルメント(配送処理)機能が追加されました。2026年1月16日にはケイパビリティ・ネゴシエーション(AIエージェントとマーチャントが互いの対応能力を確認し合う仕組み)が導入され、2026年1月30日にはエクステンション、ディスカウント、ペイメントハンドラーが追加されています。

わずか4ヶ月で4回のメジャーアップデート。このスピード感は、エージェンティックコマースの技術基盤がいかに急速に成熟しつつあるかを示しています。

実際に動いているもの

ACPを基盤として、以下のサービスがすでに稼働しています。

ChatGPT Instant Checkout は、全米のChatGPTユーザー(無料プラン含む)が利用可能です。Etsy出品者の商品はライブで購入可能、Shopifyマーチャント100万店以上が順次オンボーディング中。Instacartが食料品パートナーとしてInstant Checkout対応で統合済み。WalmartもChatGPTとの統合を発表しています。Targetはβテストとしてアプリ内ショッピング連携を開始。DoorDashもChatGPT内の食料品アプリとして統合していますが、チェックアウトはDoorDashアプリ側で完了する方式で、Instant Checkout(ACP)には現時点では対応していません。

Microsoft Copilot Checkout は、2026年1月のNRFカンファレンスで発表され、Stripeとの提携でCopilotユーザーがEtsy、Urban Outfitters、Anthropologieから直接購入できます。これはStripeにとってChatGPTに続く2つ目の主要AIエージェント統合です。

Agentic Commerce Suiteへのオンボーディングを済ませたブランドには、URBN(Anthropologie、Free People、Urban Outfitters)、Etsy、Ashley Furniture、Coach、Kate Spade、Nectar、Revolve、Halara、Abt Electronicsなどが含まれます。Salesforce、Squarespace、PwCなど25以上のパートナーもACPの支持を表明しています。

UCP(Universal Commerce Protocol):買い物体験の全行程をカバーするプロトコル

概要と背景

UCPは、Googleが2026年1月11日にNRF(全米小売業協会)カンファレンスで発表した、エージェンティックコマースのためのオープンスタンダードです。Shopify、Etsy、Wayfair、Target、Walmartと共同開発され、Adyen、American Express、Best Buy、Flipkart、Macy's、Mastercard、Stripe、The Home Depot、Visa、Zalandoなど20社以上がエンドーサーに名を連ねています。

ACPが主にチェックアウト(購入手続き)に特化しているのに対し、UCPは商品の発見から購入後のサポートまで、買い物体験の全行程をカバーします。商品発見(ディスカバリー)、チェックアウト、アイデンティティ・リンキング(ユーザーアカウントとの連携)、注文管理、購入後サポート(追跡・返品)。これらすべてに対する標準化されたプリミティブ(基本操作)を定義しています。

技術的な仕組み

UCPの設計思想は、Shopifyのエンジニアリングブログに詳しく解説されており、TCP/IPのレイヤードアーキテクチャと明確に対比されています。

UCPは3つの層で構成されています。ショッピングサービス層がチェックアウトセッション、ラインアイテム(商品明細)、合計金額、メッセージ、ステータスなど取引の基本操作を定義します。ケイパビリティ層はCheckout、Orders、Catalogといった主要機能領域を追加し、それぞれが独立してバージョニングされます。エクステンション層は、ドメイン固有のスキーマ(たとえばフルフィルメントやロイヤルティプログラム)をコンポジション(合成)によって拡張します。

この設計の優れた点は「モノリシック(一枚岩)にならない」ことです。フルフィルメント(配送処理)ひとつとっても、通常配送、店頭受取、ローカルデリバリー、分割配送、予約販売、定期購読など無数のバリエーションがあります。UCPはこれらをエクステンションとして追加可能にしているため、プロトコル本体を変更せずにいくらでも拡張できます。

もうひとつの重要な特徴はケイパビリティ・ネゴシエーションです。マーチャントは自社サイトの/.well-known/ucpにプロファイル(対応能力の宣言)を公開し、AIエージェントもリクエスト時に自身のプロファイルURLを渡します。両者の対応能力が動的に交差計算(ネゴシエーション)されて、その取引で利用可能な機能が決まる仕組みです。HTTPのContent Negotiation(Accept headerなど)と同じ原理で、馴染みのある設計パターンです。

決済面ではペイメントハンドラーというアーキテクチャを採用しています。プロトコル自体がすべての決済方法を定義するのではなく、Google Pay、Shop Pay、地域のPSP(決済サービスプロバイダー)などがそれぞれ独自のハンドラー仕様を公開します。マーチャントは受け付けるハンドラーを宣言し、エージェントがそのうちひとつを選んで処理する。新しい決済方法はプロトコル本体のバージョンアップなしに追加できます。

既存プロトコルとの互換性

UCPの戦略的に巧みな点は、「車輪の再発明」をしていないことです。既存の3つのプロトコルをオーケストレーション(統合調整)する設計になっています。

Agent2Agent(A2A) はGoogleが開発し、現在はLinux Foundationが管理するエージェント間通信プロトコルで、150以上の組織が支持しています。Agent Payments Protocol(AP2) はGoogle、PayPalなどが開発したエージェント決済の標準で、暗号化された「mandate(デジタル契約)」を使って改ざん不能な承認証明を提供します。Model Context Protocol(MCP) はAnthropicが2024年11月に発表し、OpenAIやGoogle DeepMindも採用した、AIモデルと外部データソース・ツールの接続標準です。

UCPはこの3つを組み合わせて、MCP経由の商品発見、A2A経由のエージェント間連携、AP2経由のセキュア決済という購買行程の全体をカバーします。

実際に動いているもの

2026年2月11日時点で、Google検索のAI ModeとGeminiアプリ内で、Etsy・Wayfairの商品がUCP経由で購入可能になっています。AI Modeの商品結果に「Buy」ボタンが直接表示され、Google Payで決済が完了します。Shopify、Target、Walmartの統合も近日中に予定されています。

Googleは新たにBusiness Agentも発表しており、Lowe's、Michael's、Poshmark、Reebokなどがパートナーとして参加。ブランド固有のデータで訓練されたAIアシスタントがGoogle検索内で機能し、ユーザーの質問に応じて商品推薦や購入支援を行います。

さらにDirect Offers のパイロットも始動。AI Modeの応答内で、小売業者が購入意欲の高いユーザーに対して限定プロモーション(特別割引、送料無料、延長保証など)を提示できる仕組みです。

ACP vs UCP:対立ではなく補完

ここまで読んで「どちらを選ぶべきか」と思った方もいるかもしれません。結論を先に言えば、両方です。そしてこれは、両プロトコルの設計者たちも明確に意図しています。

Stripe自身がUCPのエンドーサーに名を連ねています。Stripeのブログでも「UCPの登場はエージェンティック経済の成長を検証するもの」と明記されており、Agentic Commerce Suiteは将来的にACPとUCPの両方を自動サポートする設計だと説明されています。Suiteを使う事業者は、追加のインテグレーション不要でUCPにも対応できるようになります。

では何が違うのか。ACPは会話型AIでの高意図購買に最適化されています。ユーザーがChatGPTやCopilotで具体的に「これを買いたい」と伝えたとき、チェックアウトを最速で完了させることに焦点を当てています。

一方UCPは、商品の発見から購入後サポートまでの全行程をサーフェス非依存でカバーします。Google検索のAI Mode、Geminiアプリ、その他どんなインターフェースからでも、統一的なプロトコルで全フローを処理できます。

イメージとしては、ACPが「専用高速道路」、UCPが「汎用インフラストラクチャ」。ChatGPTやCopilotで「このNikeのシューズを買う」と言ったらACPが処理し、Google検索でランニングシューズを調べていて気に入ったものを見つけたらUCPで購入する。ユーザーは違いを意識しませんが、裏側では異なるプロトコルが動いています。

EC事業者にとって重要なのは、どちらか一方ではなく、両方に対応することがトラフィックの最大化につながるという点です。ChatGPTの9億人以上の週間ユーザーとGoogle AI Modeの急成長を考えれば、両プロトコルに対応することで到達可能なユーザー層が大幅に拡がります。Google Ads対Meta Adsの両方を運用するのと同じ発想で、ACP対応とUCP対応を並行して進める必要があります。

手数料構造:新しいチャネルのコスト

EC事業者にとって、チャネルの選択は売上だけでなくコスト構造にも直結します。各プラットフォームの手数料を比較しましょう。

ChatGPT(ACP経由)

OpenAIが取引完了に対して4%のサービスフィー を徴収します。これに加えてStripeの決済処理手数料が約2.9% + $0.30。たとえば100ドルの注文なら、OpenAIに4ドル、Stripeに約3.20ドルで、合計約7.20ドル(約7%)です。

重要なポイントとして、この手数料は返品時に返金されます。また、OpenAIは「Instant Checkoutの有無が商品ランキングに影響しない」と明言しています。商品の推薦はあくまで関連性に基づくオーガニックなもので、手数料を払っているから優先表示されるわけではありません。ただし、同じ商品を複数のマーチャントが販売している場合、Instant Checkout対応の有無はマーチャントランキングの考慮要素のひとつにはなるとされています。

Google AI Mode(UCP経由)

2026年2月時点で、Google側のプラットフォームフィーは発表されていません(実質ゼロ)。Google Payの標準的な決済処理手数料のみが発生します。これは明らかに戦略的な価格設定で、エージェンティックコマースのインフラとしてのUCPを一気に普及させる意図があります。

ただし、将来的にGoogleがこの無料モデルを維持するかどうかは不透明です。GoogleはDirect Offers(AI Mode内の限定プロモーション)のパイロットを始めており、広告モデルとの連携でマネタイズする方向に進む可能性があります。

Amazon マーケットプレイス(参考比較)

Amazonのマーケットプレイス手数料はカテゴリによって8〜45%(大半のカテゴリは15%)です。FBA(Fulfillment by Amazon)手数料を含めると、中小セラーの実質コストはさらに上がります。

手数料比較の要点

この比較で見えてくるのは、AIエージェント経由のチャネルは、従来のマーケットプレイスと比較して大幅にコスト効率が良いということです。ChatGPT経由の合計約7%は、Amazonの大半のカテゴリの手数料15%の半分以下。Google AI Mode経由はプラットフォームフィーが現時点で発生しない。

特にD2C(Direct to Consumer)ブランドにとっては、AIエージェント経由の販売チャネルがAmazon依存から脱却する経済的に合理的な手段になりつつあります。マーチャント・オブ・レコード(販売者記録)は自社のまま維持され、顧客関係も直接保持できます。

Amazonの防衛策:巨人はどう動いているか

エージェンティックコマースの文脈で最も興味深い動きを見せているのが、Amazonです。

「壁」を築く戦略

Amazonは2025年にOpenAIのウェブクローラーをrobots.txtでブロックし、膨大な数の商品がChatGPTの検索結果から除外される事態を引き起こしました(業界アナリストの推計では数億点規模)。これは明確な防衛策です。Amazonにとって、自社の膨大な商品カタログがChatGPTやGeminiに「ただ乗り」されて、プラットフォーム手数料を払わずに売上が流出することは看過できません。

「攻め」の独自エージェント

防衛と同時に、Amazon独自のエージェント開発も進んでいます。

Rufus はAmazonアプリ内に搭載されたAIアシスタントで、Amazonの商品カタログに特化した商品検索・比較・推薦を行います。Buy for Meはさらに踏み込んだ機能で、Amazon以外の小売サイトの商品をAmazonアプリ内から購入完了させるものです。つまりAmazonは、自社プラットフォームの外にある商品まで、Amazonアプリを通じて購入させようとしています。

CEOのAndy Jassyは、2025年10月のQ3決算説明会でサードパーティのエージェントとの「パートナーシップ」への開放性を示唆しました。Jassyの実際の発言は「サードパーティのエージェントとの提携を予定しており、方法を見つけなければならない」というもので、「顧客体験を良いものにする方法を見つける必要がある」という条件を付しています。自社の顧客体験とプラットフォームのコントロールを維持しつつ外部連携を模索する姿勢と読み取れます。

EC事業者にとっての含意

Amazonのこの動きは、オープンプロトコルの価値を逆説的に証明しています。

Amazonが壁を築くほど、ACP/UCPのようなオープンプロトコルに対応しているブランドが、Amazon以外の経路で顧客にリーチできる優位性が増します。Amazonのマーケットプレイスに出品している事業者は、手数料8〜45%を払い、顧客データはAmazonに帰属し、レビューもAmazonの財産になります。

一方、ACP/UCP経由であれば、ChatGPTやGoogle AI Modeを通じて直接販売しながら、マーチャント・オブ・レコードは自社、顧客関係も自社で保持。手数料もはるかに低い。この構造的な差異は、EC事業者の長期的なチャネル戦略に大きな影響を及ぼすでしょう。

実装の現実:どこから始めるか

理論は分かった、では具体的にどうすればいいのか。EC事業者の状況別に整理します。

Shopifyを使っている場合

最もスムーズです。Shopifyはもともとエージェンティックコマース対応に先行しており、UCP共同開発者であり、ACP/Agentic Commerce Suiteにも対応を進めています。Shopifyが「Agentic Storefronts」と呼ぶ機能で、プラットフォームレベルでACP・UCP双方を自動サポートする設計になっています。マーチャントに求められるのは、商品カタログの品質向上と、Stripeとの決済連携(1行のコード追加で対応可能)です。

WooCommerce / BigCommerce / Squarespace / commercetools / Wixを使っている場合

これらのプラットフォームもStripe Agentic Commerce Suiteへの対応を表明しています。StripeダッシュボードからAgentic Commerce Suiteを有効化し、商品カタログをStripeにアップロード(または既存のカタログシンジケーターから接続)すれば、StripeがAIエージェントへの商品情報配信、チェックアウト処理、決済、不正検知を一括で処理します。売りたいAIエージェントをダッシュボードで選択するだけ、という導線を目指しています。

独自構築のECサイトの場合

もっとも対応が大変ですが、裏を返せばもっとも差別化の余地があるケースです。ACP仕様に基づいてCheckoutエンドポイントを自前で実装するか、Stripe Agentic Commerce Suite APIを利用する必要があります。UCPについてはGoogleのデベロッパーガイドに従い、Merchant Centerアカウントの準備、UCPプロファイルの公開(/.well-known/ucp)、チェックアウトAPIの3つの基本エンドポイント実装が求められます。

いずれの場合も共通して必要なこと

プラットフォームに関わらず、商品データの品質がすべての土台です。どれだけプロトコル対応が完璧でも、AIエージェントに渡す商品情報が不完全なら推薦候補に入りません。

具体的には、Google Merchant Centerのフィードが最新であること。商品タイトル(最大150文字)、説明文(最大5,000文字)、ISO 4217通貨コード付きの価格、在庫状況、画像、適格性フラグが正確に設定されていること。Schema.orgの構造化データマークアップが商品ページに正しく実装されていること。返品ポリシー、配送条件、保証情報がAIエージェントにとって解釈しやすい形式で記述されていること。

NRFカンファレンスでStripeのHead of Revenue & Financial ManagementであるYelena Reznikovaが語った言葉が印象的です。「構造化された商品フィードで、クリーンで最新の商品説明、価格設定、在庫状況を持つことが、適切な商品を適切なタイミングで届けるための最善の方法です。」

Google Merchant Centerの新属性:会話型コマース時代の商品データ

UCP発表に合わせて、GoogleはMerchant Centerに数十の新しいデータ属性を追加しました。これは従来のキーワードベースの商品データから、会話型コマースに最適化された商品データへの移行を示す重要な動きです。

追加された属性には、よくある商品質問への回答、互換性のあるアクセサリー情報、代替商品の提案、用途やシーン別の使用例、そして「誰のための商品か」を記述するフィールドなどが含まれます。

これらの属性が意味するのは、AIエージェントが商品を推薦する際の判断材料が、従来の「商品名+スペック+価格」から大幅に拡張されるということです。「この商品はどんな質問によく答えられるか」「何と一緒に使えるか」「代わりになるものは何か」 ―― こうした情報を構造化データとして提供できるかどうかが、AIエージェントによる推薦の精度と頻度を左右します。

プロトコル対応は「SEOの次」になる

2000年代、SEO(検索エンジン最適化)は「やった方がいい」から「やらなければ死ぬ」に変わりました。Google検索がトラフィックの主要な入口になったとき、SEO対応していないサイトは発見すらされなくなりました。

同じ構造変化が、今まさに始まろうとしています。

ChatGPTの週間アクティブユーザーは9億人を突破(2026年2月27日発表)、ショッピング関連クエリは1日5,000万件に達しています。Google検索のAI Modeが急速に普及し、検索結果ページ内で購入が完了する。この環境で、ACP/UCPに対応していないECサイトは、AIエージェントの推薦候補に入る手段を持ちません。

「エージェント最適化(Agent Optimization)」は、SEOに続く次の必須施策になります。そしてその核心は、人間が読むために最適化されたコンテンツではなく、AIエージェントが解析し、判断し、取引するために最適化された構造化データとAPIエンドポイントです。

次回予告:ステーブルコインとエージェント決済の新世界

第2回では、ACP・UCPの2大プロトコルの仕組み、手数料構造、実装の方向性、そしてAmazonの防衛策を解説しました。

第3回では、エージェンティックコマースの「決済」をさらに深掘りします。AIエージェントが自律的に支払いを行うために不可欠なインフラであるステーブルコイン(USDC、USDT、JPYC)と、Stripeが発表した決済専用ブロックチェーン「Tempo」。マイクロペイメントの可能性と日本市場の現状まで、決済の未来を包括的に解説します。

参考情報
山下 太郎

山下 太郎

代表取締役 / CEO

2000年、Webデザイナーとしてこの世界に飛び込み、フリーランスを経て2007年に株式会社アンタイプを創業。AI時代の到来とともに、効率だけを追うAI活用に違和感を覚えながら、それでも最前線でツールを使い続ける。企業のWebとコミュニケーションを設計する仕事を通じて、「人間らしさとは何か」を問い直す視点を発信し続けている。

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