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第1回: Mermaid入門 ― 基本の使い方と環境構築

作成者: Yamashita|2025.02.20

近年、システム設計書やプロジェクト管理、ドキュメント作成など、さまざまな現場で「図解」の重要性が高まっています。しかし、従来の図作成ツールは操作が煩雑だったり、バージョン管理が難しかったりする問題がありました。そこで登場したのが、Mermaidです。Mermaidは、シンプルなテキスト記述から多彩なダイアグラムを自動生成できるツールとして注目を集めています。本記事では、Mermaidの基本概念から実際の環境構築、さらには最初のチャート作成までの流れを、実例を交えながら詳しく解説します。

1. Mermaidとは?

Mermaidは、Markdownライクな記法を用いて、フローチャート、シーケンス図、ガントチャート、クラス図など、さまざまな種類の図を生成できるオープンソースのツールです。

  • 背景と誕生:
    もともとは、コードベースで図を管理することで、変更履歴の追跡やコラボレーションを容易にするために開発されました。Gitや他のバージョン管理システムと相性がよく、ソースコードと同様に図のバージョン管理が可能です。
  • テキストベースの記述:
    GUIベースのツールと異なり、Mermaidはすべてテキストで記述するため、シンプルながら柔軟なカスタマイズが可能です。また、軽量な記法であるため、短いコードで複雑な図を表現することができ、手軽に扱えます。

2. Mermaid導入のメリット

Mermaidを採用することで得られるメリットは多岐にわたります。

  • シンプルな記法:
    直感的で覚えやすい構文により、プログラミングに不慣れなユーザーでも比較的容易に図を作成できます。
  • バージョン管理の容易さ:
    テキスト形式のため、Gitなどのバージョン管理システムでの差分管理が可能。複数人での共同編集もスムーズに行えます。
  • 環境の柔軟性:
    ブラウザ上で動作するオンラインエディタ(Mermaid Live Editor)をはじめ、ローカル環境での利用も可能です。各種ドキュメントツールやCI/CDパイプラインとの連携も容易です。
  • 軽量かつ高速:
    サーバーサイドでレンダリングを行わず、クライアントサイドで直接描画できるため、処理が高速です。

3. 環境構築方法

Mermaidの利用方法は大きく分けて「オンラインエディタを使う方法」と「ローカル環境にインストールする方法」の2種類があります。

a. オンラインエディタの利用

最も手軽なのは、公式が提供する【Mermaid Live Editor】の利用です。

  • 特徴:
    ブラウザ上で直接Mermaidコードを入力し、リアルタイムに図がレンダリングされるため、初学者やちょっと試したい方に最適です。
  • 利用方法:
    公式サイト(https://mermaid.live/)にアクセスし、エディタにコードを入力するだけで、即座に図が生成されます。

b. ローカル環境での利用

より本格的にMermaidを利用する場合は、ローカル環境にインストールする方法がおすすめです。

  • 前提条件:
    Node.jsがインストールされている必要があります。まだの場合は、公式サイト(https://nodejs.org/)からダウンロードし、インストールしてください。
  • インストール手順:
    ターミナルまたはコマンドプロンプトを開き、以下のコマンドを実行します。
    npm install -g @mermaid-js/mermaid-cli
    これにより、Mermaid CLIがグローバルにインストールされ、コマンドラインからMermaidコードをレンダリングできるようになります。
  • 動作確認:
    インストール後、適当なMermaidコードをファイル(例:chart.mmd)として保存し、以下のコマンドで画像ファイルを生成できます。
    mmdc -i chart.mmd -o chart.png
    生成されたPNGファイルを確認して、正常に図が描画されているか確認してください。

4. 簡単なサンプルチャートの作成

ここでは、Mermaidを使った基本的なフローチャートの作成例を紹介します。以下のコードは、シンプルな「開始~終了」までの流れを表現したものです。

flowchart TD
    A[開始] --> B{条件判定}
    B -- Yes --> C[処理1]
    B -- No --> D[処理2]
    C --> E[終了]
    D --> E[終了]

実際にはこのようなイメージになります。

コードのポイント

  • ノードの定義:
    四角形や丸、ひし形など、用途に応じた形状を指定できます。
  • 矢印による流れの表現:
    「-->」や「--」を使って、処理の流れや条件分岐を直感的に表現可能です。
  • 条件分岐:
    複雑な条件分岐も、シンプルな記法で記述でき、後から見返しても理解しやすい構造になっています。

5. Mermaidの利用シーンと応用例

Mermaidはその汎用性から、さまざまなシーンで活用されています。

  • 技術ドキュメントの作成:
    システム構成図やデータフロー図など、技術文書に必要な図表をコードとして管理することで、ドキュメント更新が容易になります。
  • プロジェクト管理:
    フローチャートやガントチャートを利用して、プロジェクトの進行状況やタスクの関係性を視覚的に把握できます。
  • 教育・研修:
    プログラミングやシステム設計の学習教材として、コードと図の対応関係を示すことで、理解を深めることができます。

6. まとめ

本記事では、Mermaidの基本概念、導入のメリット、そして実際の環境構築と簡単なチャート作成の流れを詳しく解説しました。

  • ポイント:
    • Mermaidはテキスト記述で多彩なダイアグラムが生成できるため、コラボレーションやバージョン管理が容易。
    • オンラインエディタとローカル環境の双方で利用可能なため、用途に合わせた環境構築が可能。
    • 初学者でも理解しやすいシンプルな記法により、図解作業の敷居が大幅に下がります。

次回の記事では、Mermaidを用いた各種チャート(シーケンス図やガントチャートなど)の具体的な作成方法と、その応用例について、より詳細に解説していきます。まずは、Mermaidの基礎をしっかりと身につけ、日常の業務やプロジェクト管理に役立ててみてください。