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Googleの新規格UCPとは?AIエージェント時代のEC開発に備える

Googleの新規格UCPとは?AIエージェント時代のEC開発に備える

  • Yamashita
  • 2026.01.21

2026111日、Googleはニューヨークで開催された全米小売業協会(NRF)のカンファレンスにおいて、AIエージェントによるショッピングを実現するための新しいオープン規格「Universal Commerce ProtocolUCP」を発表しました。ShopifyWalmartTargetEtsyといった小売業界の大手企業と共同開発されたこのプロトコルは、EC業界に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。

本記事では、Web開発者やEC事業者の視点から、UCPの技術的な特徴と、今後の開発において何を準備すべきかを解説します。

UCPが解決する課題

現在のオンラインショッピングは、人間がWebサイトを訪問し、商品を選び、カートに入れ、決済を完了するという一連の流れが前提となっています。しかし、AIエージェントがユーザーの代わりに買い物をする「エージェンティック・コマース」の時代が到来しつつあります。

従来のシステムでは、AIエージェントが各ECサイトと連携するために、個別の技術的接続を構築する必要がありました。これは開発コストが高く、拡張性にも課題がありました。UCPは、この問題を解決するための共通言語を提供します。

UCPを導入することで、AIエージェントは統一されたインターフェースを通じて、商品の発見から購入、購入後のサポートまで、ショッピングの全工程をシームレスに実行できるようになります。小売事業者にとっては、一度UCPに対応すれば、複数のAIエージェントと連携できるため、開発・保守コストの大幅な削減が期待できます。

UCPの技術アーキテクチャ

UCPは、既存の技術標準との互換性を重視して設計されています。通信方式としてはREST APIJSON-RPCをサポートし、さらに以下の3つの主要プロトコルとの統合が可能です。

Model Context ProtocolMCP

MCPは、Anthropic202411月に発表し、その後Linux Foundationに移管されたオープンスタンダードです。大規模言語モデル(LLM)が外部ツールやデータソースと統合する際の標準インターフェースを提供します。UCPMCPバインディングをサポートしており、MCPを実装済みのシステムは比較的容易にUCPと連携できます。

Agent2Agent ProtocolA2A

A2Aは、Google20254月に発表した、異なるAIエージェント同士が相互運用可能になるためのオープンプロトコルです。現在はLinux Foundationの下でオープンソースプロジェクトとして運営されており、150以上の組織がサポートを表明しています。AIエージェントがタスクを委譲したり、コンテキストを交換したりすることを可能にし、複雑なユーザーリクエストに協力して対応できる仕組みを提供します。

Agent Payments ProtocolAP2

AP2は、AIエージェントが主導する決済処理をセキュアかつ監査可能な形で実行するためのプロトコルです。20259月にGoogle60社以上のパートナー企業(MastercardPayPalCoinbaseなど)と共同で発表しました。「Intent Mandate」「Cart Mandate」「Payment Mandate」という3種類の検証可能なデジタル証明書(VDC)を使用し、ユーザーの意図を暗号学的に証明することで、エージェント主導の決済における認証・認可・説明責任の問題を解決します。

UCPのコア機能

UCPの初期リリースでは、以下の3つのコア機能が提供されています。

Checkout(チェックアウト):カート管理、税計算、複雑なチェックアウトフローを統一されたセッションでサポートします。割引コードの適用、ロイヤルティプログラムの連携、サブスクリプションの請求頻度選択なども対応可能です。

Identity Linking(アイデンティティ連携):OAuth 2.0を使用して、AIプラットフォームがユーザーに代わってアクションを実行するための認可を取得します。これにより、ロイヤルティプログラムやメンバーシップとの連携が可能になります。

Order Management(注文管理):Webhookベースで注文のライフサイクルイベント(発送、配達、返品など)を通知します。購入後のサポートをAIエージェント経由で提供することが可能になります。

実装アプローチ:2つの統合パス

GoogleUCPの実装において、2つの統合パスを用意しています。

Native IntegrationチェックアウトロジックをGoogle AI ModeGeminiに直接統合する方式です。UCPの機能拡張に伴い、フルエージェンティックな体験を実現できます。標準的なECサイトにはこちらが推奨されています。

Embedded Integration高度にカスタマイズされたブランディングや複雑なチェックアウトフローを必要とする特定の承認済み事業者向けの、iframeベースのソリューションです。

開発者が今すぐ準備すべきこと

UCPは現在、米国の一部小売事業者を対象にGoogle検索のAIモードやGeminiアプリでの購入機能として展開が始まっています。日本での提供時期は未定ですが、オープンな技術規格として公開されている以上、早期の対応準備が競争優位につながります。

1. 商品データの構造化

AIエージェントが商品を正確に理解するためには、構造化されたデータが不可欠です。Google Merchant Centerへの商品フィード登録を見直し、新たに導入される「会話型コマース向けデータ属性」への対応を検討しましょう。よくある質問への回答、互換性のあるアクセサリ、代替商品などの情報を充実させることが重要です。

2. APIファーストの設計

UCPREST APIJSON-RPCをサポートしています。既存のECシステムがAPI経由でのデータ取得・更新に対応しているか確認し、必要であればリファクタリングを計画しましょう。在庫のリアルタイム確認、動的な価格設定、即座のトランザクション処理が求められます。

3. 決済システムの柔軟性確保

UCPは特定の決済プロバイダーに依存しない設計です。Payment Handler(決済ハンドラー)という仕組みにより、各決済プロバイダーが自社の仕様を公開し、マーチャントはどのハンドラーを受け入れるかを宣言します。Shopify PaymentsGoogle PayPayPalなど、複数の決済手段への対応を維持しておくことが重要です。

4. ビジネスプロファイルの準備

UCPでは、マーチャントがサポートする機能を標準化された形式で宣言する「ビジネスプロファイル」を/.well-known/ucpに公開します。これにより、AIエージェントは自動的にマーチャントの機能を発見し、ネゴシエーションを行えるようになります。この動的ディスカバリーの仕組みに対応できるシステム設計を意識しておきましょう。

Shopifyユーザーへの朗報

UCPGoogleShopifyが共同開発したプロトコルであり、Shopify上の数百万のマーチャントは比較的早期にUCPの恩恵を受けられる見込みです。Shopifyは「Agentic Storefronts」という機能を通じて、Google検索のAIモード、Geminiアプリ、ChatGPTMicrosoft Copilotなど、複数のAIチャネルでのネイティブショッピングを一元管理できるようにすると発表しています。Shopifyを利用している事業者は、管理画面からの設定だけでUCP対応が可能になる可能性が高いでしょう。

まとめ

UCPは、AIエージェントがユーザーに代わって買い物をする「エージェンティック・コマース」の基盤となるオープン規格です。MCPA2AAP2という関連プロトコルと連携し、商品発見から決済、購入後サポートまでの全工程を標準化します。

日本での展開時期は未定ですが、技術仕様は既に公開されており、GitHub上でサンプル実装も提供されています。早期に技術動向をキャッチアップし、商品データの構造化やAPIの整備を進めておくことで、来るべきエージェンティック・コマースの波に乗る準備ができるでしょう。

変化の速いEC業界において、こうした新技術への対応は差別化の重要な要素となります。株式会社アンタイプでは、最新技術動向を踏まえたEC開発・運用支援を提供していますので、お気軽にご相談ください。