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AIエージェント時代、Webエンジニアは「コードを書く人」から「システムを設計する人」へ

AIエージェント時代、Webエンジニアは「コードを書く人」から「システムを設計する人」へ

  • Yamashita
  • 2026.01.28

GitHub CopilotClaudeCursor——AIによるコード生成は、もはや実験段階を超えて実務レベルに達しています。

「エンジニアの仕事はAIに奪われる」

プログラミングを学び始めた人や、キャリアを検討している人から、この懸念をよく耳にします。

確かに、コードを書く作業の多くはAIが担えるようになりました。しかし、エンジニアの仕事が「コードを書くこと」だけだと考えているなら、それは本質を見誤っています。

コーディングの先にあるもの

エンジニアの仕事を分解すると、大きく以下の要素に分けられます。

  1. 要件を理解する
  2. アーキテクチャを設計する
  3. コードを書く
  4. テストする
  5. デバッグする
  6. 運用・保守する

このうち、AIが得意なのは「3. コードを書く」の部分です。そして、ある程度は「4. テストする」「5. デバッグする」も担えるようになってきています。

しかし、「1. 要件を理解する」「2. アーキテクチャを設計する」は、現時点のAIには難しい領域です。

なぜか。

要件理解には、クライアントの言葉の裏にある意図を読み取る力が必要です。「ユーザー管理機能が欲しい」という要望の背景には、「将来的に権限管理を細かく設定したい」という潜在ニーズがあるかもしれない。この文脈を読み取り、適切な設計判断に落とし込むのは、人間の仕事です。

アーキテクチャ設計には、現在の要件だけでなく、将来の拡張性、チームのスキルセット、予算、スケジュールなど、多くの変数を総合的に判断する力が必要です。AIは「ベストプラクティス」は提案できますが、「この状況でのベストな選択」を判断するのは人間です。

新しいエンジニア像:レビューワーとアーキテクト

AI時代のエンジニアに求められる役割を、より具体的に見ていきましょう。

AIの出力をレビューする

AIが生成したコードは、そのまま使えるわけではありません。

一見動いているように見えても、エッジケースで破綻する。セキュリティホールが埋め込まれている。パフォーマンスに問題がある。保守性が低い——AIのコードには、こうした問題が潜んでいることがあります。

これを見抜き、修正できるかどうか。ここがエンジニアの腕の見せどころになります。

興味深いのは、AIが書いたコードをレビューするには、自分でコードを書ける以上の能力が必要だということです。なぜなら、自分が書いたコードなら意図が分かっていますが、AIが書いたコードの「意図」は推測するしかないからです。

システム全体を設計する

個々の機能のコードはAIに任せられるとして、それらをどう組み合わせてシステムを構築するかは、人間が判断する必要があります。

データベース設計、API設計、マイクロサービスの分割、キャッシュ戦略、認証・認可の設計——これらはプロジェクトの成否を左右する重要な意思決定であり、かつ後から変更するのが困難な部分です。

AIに「ECサイトを作って」と指示しても、最適なアーキテクチャが自動的に出てくるわけではありません。要件をヒアリングし、トレードオフを検討し、将来の拡張を見据えた設計を行う——これがエンジニアの中核的な価値になります。

AIエージェントの仕組みを作る

ここが最も重要なポイントかもしれません。

AI時代のエンジニアには、「AIを使う」だけでなく「AIを組み込んだシステムを設計・構築する」能力が求められます。

クライアントの業務にAIエージェントを導入する。社内のワークフローを自動化するAIシステムを構築する。複数のAIツールを連携させて、より複雑なタスクを自動化する——これらを実現できるエンジニアの需要は、今後急速に高まります。

具体的には:

  • LLM APIの活用とプロンプトエンジニアリング
  • RAG(Retrieval-Augmented Generation)システムの構築
  • AIエージェントのオーケストレーション(CrewAI、LangChain等)
  • AIの出力品質管理とモニタリング
  • コスト最適化とレート制限の設計

これらは、従来のWeb開発スキルの上に積み重なる新しい専門領域です。

コードを書く能力は不要になるのか

AIがコードを書くなら、プログラミング学習は無意味では?」

この疑問に対する答えは「No」です。

AIの出力をレビューするには、自分でコードを書ける必要があります。アーキテクチャを設計するには、各技術の特性を理解している必要があります。AIに適切な指示を出すには、技術的な語彙と概念を持っている必要があります。

むしろ、AIによってコーディングの学習コストが下がった今、基礎的なプログラミング能力は「あって当然」のスキルになりつつあります。その上で、何をどう積み上げるかが差別化のポイントになります。

AI時代に価値が高まるスキル

では、具体的にどのようなスキルを磨くべきでしょうか。

1. 設計力

コードを書く前に「何をどう作るか」を決める力。これは経験と学習の両方で磨かれます。

様々なアーキテクチャパターンを学び、実際のプロジェクトで適用し、結果を振り返る。このサイクルを繰り返すことで、状況に応じた設計判断ができるようになります。

2. コードリーディング力

AIの出力をレビューするには、他人が書いたコードを素早く理解する力が必要です。

オープンソースのコードを読む習慣をつける。コードレビューに積極的に参加する。様々なコーディングスタイルやパターンに触れる。これらが、レビュー能力の向上につながります。

3. 言語化・説明能力

AIへの指示も、チームへの説明も、クライアントへの提案も、すべて「言語化」が起点です。

技術的な概念を非エンジニアにも分かるように説明できる。設計判断の理由を明確に言葉にできる。この能力は、AI時代においてますます重要になります。

4. 学習能力

技術の進化は加速しています。今日のベストプラクティスが、1年後には古くなっているかもしれません。

重要なのは「特定の技術に詳しい」ことより「新しい技術を素早くキャッチアップできる」ことです。学習の方法論を持ち、継続的にアップデートし続ける姿勢が求められます。

Web制作会社のエンジニアとして

Web制作の文脈で考えると、エンジニアの役割変化には独自の側面があります。

従来、Web制作会社のエンジニアはデザインをコードに落とし込む「実装者」として位置づけられることが多かった。しかし、この「実装」部分はAIが最も得意とする領域です。

今後は、Web制作会社のエンジニアにも「提案する力」が求められます。

クライアントの業務課題に対して、AIを活用したソリューションを提案できるか。単なるWebサイト制作を超えて、業務自動化やデータ活用の提案ができるか。ここが、制作会社としての差別化ポイントになります。

具体的な提案例

  • お問い合わせ対応を自動化するAIチャットボットの導入
  • FAQページの自動生成・更新システム
  • 顧客データを分析してパーソナライズするレコメンドエンジン
  • 社内ドキュメントを検索できるRAGシステム
  • 定型業務を自動化するAIエージェントの構築

これらを提案し、実装できるエンジニアは、クライアントにとって「コードを書いてくれる人」以上の価値を持ちます。

まとめ:実装者からアーキテクトへ

AIエージェント時代、Webエンジニアの役割は「実装者」から「アーキテクト」へと変化します。

コードを書く作業はAIに任せ、エンジニアは「何をどう作るかを設計する」「AIの出力品質を管理する」「AIを組み込んだシステムを構築する」役割に集中する。

これは、エンジニアという職種の価値が下がることを意味しません。むしろ、より上流の意思決定に関われるようになり、ビジネスへの貢献度は高まります。

コードを書く速さで勝負する時代は終わりつつあります。これからは「何を作るべきかを判断し、AIを駆使してそれを実現できる」エンジニアが求められています。

変化を脅威と捉えるか、機会と捉えるか。その姿勢が、これからのキャリアを大きく左右するでしょう。

 

この記事は、Web制作の現場でAI活用を推進している株式会社アンタイプが、業界の未来について考察したものです。