
- Yamashita
- 2026.01.22
「AIが勝手に商品を選んで買ってくれる時代」が、思ったより早く到来しようとしています。2026年1月、GoogleはShopifyやWalmart、Targetなどの小売大手と共同で、AIエージェントによるショッピングの新規格「Universal Commerce Protocol(UCP)」を発表しました。
この動きは、私たちWeb制作会社にとって何を意味するのでしょうか。従来の「美しいWebサイトを作る」「SEOで上位表示を獲得する」といった価値提供モデルは、根本から見直しを迫られる可能性があります。本記事では、エージェンティック・コマースがもたらすビジネス環境の変化と、Web制作会社が取るべき戦略について考察します。
従来のEC構築の前提が崩れる
これまでのECサイト開発は、「人間のユーザーがWebサイトを訪問し、商品を見て、購入を決定する」という前提に基づいていました。だからこそ、魅力的なビジュアルデザイン、直感的なUI/UX、コンバージョン率を高めるランディングページ、検索エンジンでの上位表示といった要素が重視されてきました。
しかし、AIエージェントがユーザーの代わりに買い物をする世界では、この前提が根本から変わります。エージェントは美しいビジュアルに感動することもなければ、巧みなコピーライティングに心を動かされることもありません。エージェントが見るのは、構造化されたデータ、API経由で取得できる商品情報、そしてプロトコルを通じてやり取りされるメタデータです。
Google検索のAIモードやGeminiアプリから直接購入が完了するようになれば、ユーザーが個々のECサイトを訪問する機会自体が減少する可能性があります。これは、Webサイトの「見た目」に依存してきたビジネスモデルにとって、大きな転換点となります。
「AIに選ばれる商品」という新たな競争軸
エージェンティック・コマースの時代、EC事業者にとっての新たな勝負所は「AIエージェントに自社商品を選んでもらえるかどうか」になります。これは従来のSEOとは異なる次元の最適化が必要です。
Googleは、UCPの発表と同時に、Google Merchant Centerに「会話型コマース向けの新しいデータ属性」を追加すると発表しました。これは従来のキーワードベースの商品説明を超えて、よくある質問への回答、互換性のあるアクセサリ、代替商品といった情報を構造化して登録できるようにするものです。
つまり、AIエージェントが「ユーザーの要望に最も合致する商品はどれか」を判断する際に参照するデータの質と量が、選ばれるかどうかを左右することになります。これは「SEO」から「AEO(AI Engine Optimization)」あるいは「AIエージェント最適化」とでも呼ぶべき新しい領域の誕生を意味しています。
Web制作会社に求められる新しい価値提供
では、Web制作会社はこの変化にどう対応すべきでしょうか。私は、以下の3つの方向性に価値提供の軸をシフトしていく必要があると考えています。
1. データアーキテクチャの設計と整備
エージェンティック・コマースにおいて最も重要なのは、商品データの構造化と品質です。商品の仕様、特徴、用途、互換性、よくある質問と回答、レビューの要約など、あらゆる情報を機械が理解できる形式で整備する必要があります。
Web制作会社は、単にWebサイトを構築するだけでなく、クライアントの商品データベース全体を設計・整備するパートナーとしての役割を担うべきです。Schema.orgに準拠した構造化データの実装、Google Merchant Centerへの最適な商品フィード設計、そして将来的にはUCPのビジネスプロファイル設計まで、データアーキテクチャのコンサルティングが新たな価値提供領域となります。
2. API・システム連携の設計と実装
UCPは、REST APIとJSON-RPCを通じて外部システムと連携します。また、MCP(Model Context Protocol)やA2A(Agent2Agent Protocol)との互換性も持っています。これらのプロトコルに対応したシステム設計・実装能力が、今後の競争力を左右します。
特に重要なのは、リアルタイム性です。在庫状況、価格、配送可能日時といった情報は、常に最新の状態でAIエージェントに提供される必要があります。基幹システムとの連携、在庫管理システムとの同期、決済システムとのインテグレーションなど、バックエンドの技術力がフロントエンドのデザイン力以上に重要になってきます。
3. 顧客体験設計の再定義
AIエージェント経由での購入が増えても、すべての顧客接点がなくなるわけではありません。むしろ、AIでは代替できない「人間ならでは」の体験をどこに設計するかが、ブランドの差別化要因になります。
購入後のフォローアップ、カスタマーサポート、コミュニティ運営、実店舗での体験といった領域は、引き続き人間の介在が価値を持ちます。Web制作会社は、オンラインとオフライン、AIと人間の接点を統合的に設計する「顧客体験アーキテクト」としての役割を担うことができます。
中小EC事業者へのアドバイス
UCPの恩恵を最も受けやすいのは、実はShopifyを利用している中小事業者かもしれません。UCPはGoogleとShopifyが共同開発したプロトコルであり、Shopifyは「Agentic Storefronts」という機能を通じて、加盟店がGoogle、Gemini、ChatGPT、Microsoft Copilotなど複数のAIチャネルで販売できる仕組みを準備しています。
Shopify以外のプラットフォームを使用している場合や、独自にECシステムを構築している場合は、UCP対応に向けた技術的な準備が必要になります。しかし、UCPはオープンスタンダードとして公開されており、特定のプラットフォームに依存しない設計となっているため、どのシステムでも対応は可能です。
今すぐできることとしては、まずGoogle Merchant Centerへの商品登録を見直し、商品情報の充実度を高めることが挙げられます。商品説明、仕様、画像、レビュー情報など、可能な限り詳細なデータを登録しておくことが、AIエージェントに選ばれるための第一歩となります。
変化を恐れず、変化を先取りする
テクノロジーの進化は、常に既存のビジネスモデルを脅かす一方で、新しい機会も生み出します。エージェンティック・コマースの波は、従来のWeb制作の価値を減じる可能性がある一方で、データアーキテクチャ、API設計、システムインテグレーションといった新しい価値提供領域を開きます。
重要なのは、変化を早期に察知し、自社のケイパビリティを拡張していく姿勢です。UCPはまだ発表されたばかりであり、日本での本格展開には時間がかかるでしょう。しかし、今から技術動向をウォッチし、必要なスキルセットの習得を始めることで、変化が本格化した際に先行者優位を確立できます。
私たち株式会社アンタイプは、Webサイト制作にとどまらず、クライアント企業のデジタル戦略全体をサポートするパートナーとして、こうした技術変化への対応を支援しています。エージェンティック・コマースへの対応について、お気軽にご相談ください。
まとめ
GoogleのUCP発表は、EC業界における「エージェンティック・コマース」時代の本格的な幕開けを告げるものです。AIエージェントがユーザーの代わりに商品を発見し、比較し、購入する世界では、「美しいWebサイト」や「巧みなマーケティング」よりも、「AIに正しく理解される商品データ」と「APIを通じてシームレスに連携できるシステム」が勝敗を分けることになります。
Web制作会社にとっては、従来の価値提供モデルを見直し、データアーキテクチャ設計、API・システム連携、そして人間ならではの顧客体験設計という新しい領域にケイパビリティを拡張していくことが求められます。変化は脅威であると同時に機会でもあります。今から準備を始めることで、来るべき変化の波に乗る準備ができるのではないでしょうか。



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